「流通ビジネス研究所」始動

家電量販店店内イメージ

2020年8月に株式会社加藤馨経営研究所が設立され、加藤馨氏と加藤修一氏の創業精神を調査、研究する業務を始めてから1年以上が経過しました。かつて加藤電機商会やカトーデンキの本社だった柳町事務所に、かつて加藤馨社長時代に社員だった方、ケーズホールディングスの子会社の方などが訪れるなど、加藤馨経営研究所としての活動も、ある程度土台が固まったと実感しています。

そこで3月末をもって私は取締役研究所長を退任することを決めました。今後の加藤馨経営研究所は、ケーズホールディングス本社と連携を強化して運営される予定です。

一方、私は今年設立した「株式会社流通ビジネス研究所」に軸足を移し、引き続き家電を中心とした流通業界の調査、研究、コンサルティングを行っていきます。

加藤馨経営研究所の設立前から加藤馨氏が残した豊富な資料や手記の整理、調査をはじめて2年弱になります。直接加藤馨氏にお会いしたことはありませんが、柳町事務所や残された資料を通じて、その人柄、合理的な考え方などを実感することができました。とはいえ、まだまだ「がんばらない経営」の研究は完了していません。加藤馨氏の人生や経営思想についての研究、さらには加藤修一氏を含めた「がんばらない経営」という創業精神について引き続き研究していきます。

創業精神の大切さ

創業者の経営思想や、創業家が作り上げた創業精神の研究はいろいろな会社で行われています。一方で、「創業精神は会社の財産であり公にすべきではない」という意見も聞かれます。本当にそうでしょうか。

加藤馨氏が大切にした言葉が「正しい人生」「誠実」「誠意」です。以前記事でも紹介しましたが、加藤馨氏は以下のような言葉を社員に向けて話しています。

社会人としての暮しにおいて、仕事においても、個人の付き合いでも、正義観念というものが必要です。正義観念というものがどういうものかというと、人はすべて損得でやってはいけないのです。損だからやらない、得だからやる、そんな人間は信用されません。そうではなくてどちらが正しいか。その見分け方は、自分がやっていることと同じことを全国の国民がやったら世の中が良くなるか悪くなるかを判断することです。一番簡単な判断の方法です。世の中が良くなると思ったら賛成、悪くなると思ったらそれは悪いことだから止めましょう。

~2005年創業祭 加藤馨氏 講話「幸福に暮らす法」より ※太字は当研究所によるもの

これとほぼ同じ内容を、別の機会にも話しています。

この50年の間に、私が絶えず考えてきたことは“正しい人生”ということです。人生は、「自分の就いている職業を通じて、社会のためになっているのだ」というしっかりとした誇りを持って生きていかなくてはいけないということです。そして、ものを判断するうえでは損得を考えず、すべて、どちらが正しいかということを判断基準にしてほしいものです。この基準が間違っていると社会的にも信用されませんし、事業としても発展しなくなると思います。
何が正しいかそうでないかをどうやって判断するのかというと、「すべての人間が私と同じようなことをしたら世の中は良くなるだろうか、カトーデンキは良くなるのだろうか」ということを考えてみることです。今、自分のやっていることがすべて良くなることだと考えたら、それはやらなければいけません。損得ではなく、世の中のためになるかどうかを考えれば決して判断を間違えることはないのです。

「1997 SUMMER ひろば NO.19」の「名誉会長挨拶」より ※太字は当研究所によるもの

「自分の就いている職業を通じて、社会のためになっているのだというしっかりとした誇りを持って生きていかなくてはいけない」「自分がやっていることと同じことを全国の国民がやったら世の中が良くなるか悪くなるかを判断する」──これらの言葉ほど、加藤馨氏を象徴する言葉はないでしょう。世の中が良くなるような正しいことをしてこそ会社が良くなる。抜け駆けして自分だけ良い目を見るとか、他者を出し抜いたり騙したりして利益を得るような発想は、加藤馨氏にはありません。不道理な戦争を経験した加藤馨氏は、世の中が良くなることを何より願っていました。自身が経験した戦争を見つめ直し、日々報道される事件や事故に心を痛め、助けられることがあれば積極的に動きました。その姿勢には、「自分さえ良ければ」「自社さえ良ければ」という考えは全くありせん。

戦争の悲惨さを目の当たりにし、その中で「正しく生きる」ことの大切さを痛切に感じ、誠実に生きながら会社を発展させた加藤馨氏。その経営思想は、社会にとって大切な財産だと思います。そして、終戦から75年以上が経過した現在こそ多くの人に知ってほしいものですし、多くの会社に参考にしてほしいものです。

加藤馨氏の創業精神は「社会のためになる」「会社経営の参考になる」からこそ、新しい研究所でも加藤馨氏の研究は引き続きしっかり取り組んでいきたいと考えております。

流通ビジネス研究所としても、加藤馨氏の言葉を胸に、世の中に貢献できるような研究、発表を心掛けていきます。今後の活動にご注目いただけますと有難く存じます。

研究所長 川添 聡志

株式会社流通ビジネス研究所 所長 雑誌および書籍の編集者として出版業界に携わる。家電量販店向け業界誌『月刊IT&家電ビジネス』編集長を務めた後、家電量販企業に転職。営業企画やWebを含めた販促などを担当し、その後流通コンサルタントとして独立。ケーズデンキ創業者・加藤馨氏および経営を引き継いだ加藤修一氏の「創業精神」を後世に伝えるため、株式会社加藤馨経営研究所の設立に携わり研究所所長に就任。その後、ケーズデンキに限定せず、幅広く流通市場を調査研究するため、2022年1月からコンサルティング会社「株式会社流通ビジネス研究所」を設立し、同年4月より活動拠点を新会社に移行

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