古い写真の修整

加藤電機商会最初の社用車

※本記事は「株式会社加藤馨経営研究所」サイトにて執筆・公開した記事です。

最近は連載のみならず、当ページの記事の掲載も滞ってしまい、申し訳ありません。記事掲載は遅れていますが、研究所としての活動はこれまでどおり着実に進んでいます。

そんな中、研究所での取り組みの一端として、前回、古い写真の整理を紹介しました。残念ながら、古い写真の場合、傷や折り目がついてしまっていたり、あるいは破れてしまっているものもあります。このような劣化した写真は、とりあえずスキャナーで取り込みますが、デジタル画像にすると実物より若干見やすい画像になります(取り込み時にスキャナーのソフトにより画像が自動補正されるため)。

しかしながら、取り込む写真が破れてしまっている場合はどうにもなりません。このような場合、画像修正ソフトAdobe Photoshopの出番です。前回「創業期の写真整理」の記事で、昭和22年4月7日に撮影された、加藤馨氏が元台町に店舗兼住宅を借り、家族で記念撮影した写真を掲載しました。その写真を修整したものが下の画像です。前回掲載時はセピア色でしたが、カラーのままだと汚れが目立つので、まずは白黒写真(グレースケール)にしたものが左の写真です。

古い写真の修整の例
写真の破れた傷や汚れなどを修復する(左が修復前、右が修復後)

この写真には、汚れだけでなく、加藤芳江氏の服から顔にかけての破れ、馨氏の足元に伸びた破れ、後ろの建物のガラス部分の破れなど、色合いの補正だけでは直せない傷が多くあります。これらを手作業で修復し、最後に色合いを整えたのが右の写真です。左の画像と比べてかなり自然な印象になったのではないでしょうか。前回掲載したセピア色の画像と比較すると雲泥の差があると思います(背景の暗い室内の部分は若干不自然ですが、あえて全体を塗りつぶさず元の画像の雰囲気を残しています)。

古い写真や資料はデジタル化をすることで、いつまでも劣化することなく残せます。さらには必要な修正などを施すことでより臨場感のある印象を与えられます。加藤馨経営研究所は、今いる研究員だけで研究が完了するわけではありません。残された資料をベースに、加藤馨氏や加藤修一氏の経営の考え方や会社発展の歴史、人を大切にする経営がしっかり企業の成長につながるという事実を、長く伝えていくことが大切な使命です。残された紙の資料はもちろん、このようなデジタル化したデータは、今後研究所を引き継ぐ人たちが何代にもわたって学び、創業精神を引き継いでいく上で欠かせないものです。このような地道な作業も、研究所創設メンバーである自分の大切な仕事と考えています。さらには、研究所を引き継ぐ人を探し、教え育てることも重要な使命です。

加藤電機商会 初の社用車マツダR-360クーペ

さて、せっかくですので、古い写真から一点選んで紹介しましょう。下の写真は、加藤馨氏が初の社用車と記念撮影したものです。加藤修一氏によると、加藤電機商会最初の社用車は中古車だったそうです。よく見ると車のドアのところに「加藤電機商会」の文字が見えます。

加藤電機商会最初の社用車
加藤馨氏と、加藤電機商会初の社用車 マツダR-360クーペ

初の社用車は、マツダのR-360クーペという車で、1960(昭和35)年に発売されました。 ですから、時期的には、元台町から根積町(現在の柳町事務所の場所)に移転し、商売が順調になった時期でしょう。周囲の風景を見るに、1964(昭和39)年にコンクリート三階建てビルに建て替える前でしょうか。戦争が終り、苦労してラジオ修理店を開業し、電気店を立ち上げた加藤馨氏。根積町の付近も空爆で焼け野原になりましたが、その場所に自社店舗を建て、商売が軌道に乗って手に入れた車です。まさに戦後復興の象徴と言えるでしょう。うれしそうな加藤馨氏の笑顔がとても印象的な写真です(なお、この画像は修整を施していません)。

研究所長 川添 聡志

株式会社流通ビジネス研究所 所長 雑誌および書籍の編集者として出版業界に携わる。家電量販店向け業界誌『月刊IT&家電ビジネス』編集長を務めた後、家電量販企業に転職。営業企画やWebを含めた販促などを担当し、その後流通コンサルタントとして独立。ケーズデンキ創業者・加藤馨氏および経営を引き継いだ加藤修一氏の「創業精神」を後世に伝えるため、株式会社加藤馨経営研究所の設立に携わり研究所所長に就任。その後、ケーズデンキに限定せず、幅広く流通市場を調査研究するため、2022年1月からコンサルティング会社「株式会社流通ビジネス研究所」を設立し、同年4月より活動拠点を新会社に移行

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